Ergo42という自作キーボードを作りました(時系列編)
自作キーボード Ergo42
ここ2か月ほどの間、少しずつ自作のキーボードを作っていました。
これまで、Raspberry piを使ってちょっとした工作をしたりはしていましたが、ちゃんとした実用品を作るのは初めてかもしれません。ざっくり完成までの流れを説明すると、Ergo42という入門(?)キットを購入して、キットに含まれていないパーツは自分好みのものを取り寄せて、それらを組み上げ、ファームウェアを書き込んでできあがり、となります。
Ergo42で検索すると、ネット上にすでに技術者目線での作成レポートを上げている方はいらっしゃるので、私はこの界隈の初心者目線で「いかに沼に足を踏み入れたか」と「好みを反映するためにしたこと」と「ぎゃぁ(失敗も楽しい)」に着目して書いていこうと思っています。長くなるので2回に分けて書きます。
ことの発端は技術書典4(2018/04/22@アキバ・スクエア@け08たのしい人生)
技術書典というイベントがあるということを4回目の開催で初めて知りました。コミケなど同人誌即売会の存在は知っていましたが、私はどちらかというと遠巻きに眺めているタイプで、自分から渦中に飛び込むことはありませんでした。しかし技術書典は技術方面限定のイベントということだったので、気持ちのハードルがぐっと下がり遊びに行くことになりました(過去ブログ)。
ここで入手した自作キーボードの本。1000円。
キーボードにこだわりたいという思いは以前からあったけれど、HHKBみたいなギュッとしたのは正直あまり乗り気ではありませんでした。キーが少ないと、使い慣れるまでにそれだけ訓練が求められます。テンキーが分離しているほうが正確に入力できるし、InsertやDeleteキーはその他一般のキーから少し離れたところにあるほうがミスタイプしにくいと思っていました(現在も思っています)。
セキュリティに厳しい職場で働いているので、自前のデバイスを持ち込むことは許可されておらず、会社と自宅でレイアウトが違うキーを使うことになるのも負担に感じていました。だけど、でも、スイッチの指触りにこだわりたい気持ちは、とても、あるのでした。
Ergo42のキーボードキットをBOOTHで購入(2018/05/05)
そんな日々を過ごしていた私に、こんなツイートが飛び込んできました。
Ergo42 キーボードキット | たのしい人生(別館) https://t.co/hsEYAGAaRx #booth_pm#tokyomk4 がいよいよ明後日ですが、その前日となる明日 5/5 22:00 から #Ergo42 の通常販売予約がいよいよ開始します!通常販売版では PCB とケースだけでなく Pro Micro やダイオードもつきます!ぜひ!!!!! pic.twitter.com/1e7rKzlvmO
— 人生たの椎名林檎 技術書典4 け08 (@Biacco42) 2018年5月4日
思えば、ここが沼の入り口だったのです。「明日から受けつける」という掲示が目に留まりました。理想と比べるとキーの数は少なくて、もやもやする気持ちはあるのですが、単純に入門として作ってみたくなりました。また、こういったところは数が決まっていてほしいときに買わないと次の機会がない(バーゲンセール理論)こともしばしばあるものです。
そんなこんなで背中を押されるようにして勢いで購入しました。9000円。キットには、基板2枚(左手用/右手用)、Pro Micro(ファームウェアを書き込むところ)2枚、ダイオード(60個くらい?)、タクトスイッチ(Pro Microのリセットボタン用)、それから基板を保護してイケてる外観にするためのアクリル板、などが含まれています。キーボードを完成するのに必要なすべてがあるわけではないので、追加の買い物をしていきます。
キースイッチの好みを探す(2018/05/25)
Ergo42のキットには、キースイッチ(個別のキーの土台の部分にあって、押されたら電気が通るスイッチ)が含まれていません。ついでにいうとキーキャップ(スイッチの上にかぶせるもので、指が触れる部分)もありません。ここは人により好みが大きく分かれるところです。Ergo42は幅広いキースイッチを分け隔てなく(たぶん)取り付けられるように設計されており、つまり「このへんは各自お好みで選んでね」という製作者の意図が現れているわけです。
1980年代のMSX2の時代からいろんなキーボードを触ってきた私ですが、なんとなく自分の好みはカチカチ音がするメカニカルスイッチだなと思っていました。今回、キースイッチの感触にこだわりたかったので、まずは9ボタンのサンプルをAmazonで購入。このときスイッチ引き抜き工具も併せて購入しました。このサンプルスイッチ、自作キーボーダーでなくても、手遊びのためにデスクサイドに置いておくのをお勧めします。ちょっとストレス発散になるかも。
LeaningTech キースイッチ メカニカルキーボード キーカップ キーカバー Cherry MX (9軸)
- 出版社/メーカー: LeaningTech
- メディア: エレクトロニクス
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SAILIN メカニカルキーボード キートップ引抜工具 キーキャップ&キースイッチ 両用 2in1 メンテナンス工具
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入手してから、これはCherry MXという種類のスイッチだということを認識しました。「メカニカルキーボード」はどれもカチカチいうものだと思っていたのですが、必ずしもそうではないということもわかりました。メカニカルというのはバネとスイッチがキーひとつひとつについているものの総称のようです(注:そうでないものがあるのか?と思われるかもしれませんが、お求めやすい量産キーボードでは、大きな一枚のゴム膜のようなものでキーの弾力感を実装していて、バネはありません。すべてのキーを一枚の膜で面倒みたりしています。メンブレン式と呼ばれているらしいです)。カチカチ言わなくても、メカニカルキーボードと呼ぶ場合があるということですね。
購入したサンプルでは、一定の重さでスッと押せる感触(リニア)のものもあるし、私が想像していたカチカチ鳴るもの(クリッキー)とか他にもタクタイルとか、押す感触ごとに呼び名が付いています。メーカーのWebページを見にゆくと、押し込みの強さを分析したグラフも掲示されていたりします。その界隈でだけ使われる用語を覚え始めると、ますます好奇心が湧いてきたりするものです。そういうタイプの人が、沼にはまるわけですが……
Cherry MXのスイッチはカチカチいうところは気持ち良くてOKだけれど、トラベル(押し込みの深さ)が少し長く感じられました。トラベルが短いものはロープロファイル(もともとは「場所を取らない」的な意味ですが)と呼ばれているそうです。また、押し込み圧はあまり重すぎないほうが疲れなさそうだ、という感想も持ちました。Cherry社にはCherry MLというロープロファイルのキースイッチシリーズもあるのですが、この辺りになって、キースイッチはほかのメーカーも作っているのだということに気が付きました。どうやら、かつてCherry社はこのあたりで特許を持っていたらしいのですが、それが期限切れになったあと、他の会社が類似品を製造するようになっているそうです。
これらもろもろの事情を含めて、ロープロファイルのキースイッチを試してみることにしました。
ロープロファイルのキースイッチの好みを探す(2018/05/27)
キースイッチを作っている会社に、Kailh(カイラー?)社というところがあります。そもそもキースイッチを個人向けにばら売りしている、という事実も初めて知ったのですが、その界隈の人たちはアリババで買ったりするらしいです。アリババはもちろん知っていたのですが、中国の人が利用するAmazonというくらいにしか思っていませんでした。自分の手の届くところにあるものだったとは。いずれ使ってみようと思います。
ひとまず、今回は米国のNovelKeysというところで、ロープロファイルのスイッチのサンプルセットを注文しました(2018/05/27:承認05/30:出荷06/08)。 Kailh MLのサンプル8種類セット($24.89)を選びました。手元に届くまで結構時間がかかり、実際に触れたのは2週間ちょっとあとでした。想像していたとおり、ロープロファイルのほうが手が疲れないようです。カチカチいうスイッチで、比較的軽いものを選んで、Kailh ML(白軸)を採用することにしました。
最終的な材料調達(2018/06/09)
NovelKeysから届くまでの間に少しずつ情報収集を進めると、国内でも遊舎工房というところでKailh MLとこれに適合したキーキャップを取り扱っていることを知り、今回はこちらから必要なものを購入しました。キースイッチとキーキャップはお互いに合った形状のものを選ばなけれはいけません。キースイッチ2260円/60個。キーキャップ3000円/104キーボード用。あとから追加で無地キーキャップも購入1296円/30個。これでキーボードの材料になるものはひととおりそろいました。遊舎工房さんは、注文して数日で届くのでお手軽です。
まとめ
今回は買い物編ということで、実際の組み立て前の計画とテストと調達について書いてみました。ただ買うだけなら正直高い買い物です。でもあれこれ調べる途中で知ることとか、初めてやってみることから得られる経験は有益だし楽しいものです。ご興味を持つかたがいらっしゃったら、沼においでよ!ということで、この界隈の人たちが集まっている場所をご紹介して今回は終了です。
DiscardのSelf-Made Keyboards in Japan
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